ラベル

嘘も方便

中学の同級生である"浜田君"は、"ハマチ"と呼ばれていた。
平日もゲーセンに通い、ストⅡに五万もつぎこむ程のゲーマーで、しかし「ゲーマー」と呼ぶと、「そういう呼び方はして欲しくないな」と過敏に反応していた。

「色が白い」は禁句である。それ言っちゃうと、「それだけは言わないでくれえ~気にしてるんだよ。気にしてるんだよ」と七分間言い続けて、一日へこむ繊細な少年だった。
ところが、普段は冷静で、悪口を言っても怒らずにへこむタイプだったが、
「ゲームオタク」と言うと、
「オタクじゃねえっ~!!」
と、足を引きずるテラノザウルスのような走り方で追い掛けてきた。
首をかしげて顎を突き出し、片足のステップが強いので、斜め前へ跳ぶのだが、なぜか真っ直ぐ走ってくる。しかも結構速い。
卓球(タク球)部所属の幽霊部員だったが、根っからの運動音痴ではなくて、バスケも意外と動ける。
雰囲気は目立ちたがり屋の真逆だが、独り言のように様々なことを呟き、意外と話す。

「高校合格したら、爺ちゃんにチャリで市内の裏道全部教えてもらお。爺ちゃん道に詳しいんだよ」

晴れて彼は第一志望に合格した。
ある日、別の高校に通っていた私は、学校帰りに彼の家に遊びに行った。
ストⅡをするのが目的だが、彼は強過ぎるので、今日はエドモンド本田の移動張り手ハメ技だけを使い続けてコテンパンにしようと目論んでいた。
彼は、スーファミの音声コードをステレオのスピーカーに繋げていたから、音質が非常に良かった。

「いつか、アーケードコントローラー買おうと思ってる」
「ナニソレ?」
「ゲーセンのストⅡと同じ形のコントローラー」
「ゲーセン行かなくて済むね」
「ゲーセンで無敗したいから家で練習する」
「高校の1組にさあ、ハマチのソックリさんが居るんだよハハッ」

ソックリさんは、"柳井君"という大人しい人で、少しポッチャリしていたが、色白な所とゴマのような目付きが異様に似ていた。おなちゅうの間では彼を"ヤナチ"と呼び、「ハマチにクリソツだぁ」とヒソヒソ話しをしては楽しんでいた。

「誰かに似てるって言われるのって非常に不愉快だな」
ハマチがゲームコントローラーを握りながら、 呟いた。
「ははは」
「それは失礼なことだぞ」
私は笑って流そうとしたが、彼はそれを許さなかった。ゲーム画面から目は離さないものの、ぶつぶつと傷心と怒りの思いを呟き始め、空気は最悪となった。

【問い】
その時、私が言ったある一言で、ハマチの機嫌が直り、ブツブツが止みました。
その一言とは?




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