食い逃げ

冬場になると、食べることしか楽しみがなく、でも簡単にできることなので、食に逃げてる。よく食べる。特に夜にぐわっと食べる。四、五時間掛けて食べ続け、飲み続け、甘い小麦粉系もついばんでいたら、太らない体質とはいえ、夏に比べて六キロも太った。ジャッキーチェンが産まれた時は五千六百八十グラムだったので、只今このお腹に超健康優良児を身籠っているようなものである。

ただし、カラクリがある。

食べて飲んでる最中に不意に尿意が来てトイレへ行った後に体重計に乗ると、300グラム減。朝までに7回ぐらい行くので、翌朝は2100グラム減。
そして翌朝は、大きい方もメチャメチャ出る。途中で流さず出し続けていたら、たまり積もって、門まで到達したこともある。また、ずっと力んで、途中で門を閉めずに小まめに千切らなかったら、長ーーーーーい大が便器の中で前方へ倒れこみ、そのまま玉裏を擦って前へ行き、座ってる股の間から頭を出したこともある。大事がもう1本生えたと思い、たまげた。
短時間で連発することもあるので、尿も合わせれば、毎日、三千五百グラムの元気な便ちゃんが排出されていることになる。
また、寝汗が出ているので、200グラム減。いや、自律神経失調症で多汗なので、500グラム減。悪夢で流した涙が0.03ℓ。鼻水少々。
そして、冬服が五ひとえで2000グラム。
以上を踏まえると、夜食べる前は、最大値の時より六キロ減。結局太っていないことになる。


逆に夏場は食欲不振なので、六キロ痩せた。

ただし、カラクリがある。

その夏は十日間旅行をしていた。テーブルに灰皿が設置された昭和なラーメン屋で、ラーメン&チャーハンを食べ、チャーハンが旨かったので、夜もチャーハン大盛りを持ち帰って食べたら、少し腹が重い感じがして食道がキリキリした。 そして翌日、宿からコンビニに行く最中に軽く放屁した際に出た感じがしたので、下着を浮かせたままトイレへ駆け込んだのを皮切りに、下痢にさいなまれ続けた。
食中毒かと思ったが、その下痢というのが新感覚で、腹痛・吐き気・嘔吐が全く無い。脱力感も無い。しかし、味のあるモノを食べるや体内を突っ切るように出るので、1日に梅のオニギリ2個程度しか食べないようにした。空腹感も無かったが、脱水になると危篤に陥るので、ビールやウーロンハイは絶やさず摂取した。念のためグレープフルーツ割は避けた。
下痢が始まってから1日目の深夜から、回数が増し増しになっていき、しかも1回の量が多くて、ぶっ太い尿が、オロロロロロロロってマーライオンの口から出る湯水のごとく出る水下痢。それが、1日に15回の2日続いて、全く治る気配が無い。
4日目から間隔が開くようになったが、依然として放屁は危険な状態。相変わらず腹痛や吐気は無く、身体もだるくなく、水下痢以外は正常。むしろ酒量が減ったので、身体は軽く感じた。

下痢が始まってから7日目のことである。
実家に戻った翌朝、妙にデン部に汗かいてるなと思ったら、出ちゃっていて、さすがにヤバイと思って病院へ駆け込んだら、チョウカンボウだった。道理で、長引いているわけだ。
旅中に寝下痢しなかったのは不思議である。やはり実家では、気も門も緩むのか。
医者から「水分の取り過ぎだから酒を辞めないとずっとだよ」と言われたので、十年ぶりの休肝日を設けた。
体重を量ったのは、その時である。

冬場の場合は、六キロ摂取して六キロ排出しているのでプラマイゼロ。
一方その夏は、六キロ以上排出して摂取がほぼゼロなので六キロ減で納得が行く。ポカリで下痢止め飲んでたら治り、体重は元に戻った。

以下は、夏の旅行中に、家に一泊させてもらった友に診断結果を報告した後のメールのやりとりである。

友『まじか。ノロではないよね?』

私『ノロって必ず嘔吐がある?』

友『知らん。医者がノロと言わなかったなら大丈夫だと思うが。』

私『嘔吐も腹痛も無いから軽い。発熱も無いと思ってたら、病院で37.4℃あってビックリした。シャワーしてから行ったからかも。血液検査した所、白血球の減少も無いから、菌は弱いらしい。水分(特に酒と思われる)の摂り過ぎが原因だって。飲酒して無いと、身体がこんなに軽いとは思わなかった。悲しみも深くは無い。大きな喜びも万能感も訪れないけど。』

友『ノロだったら教えてくれ。仕事休まんといけんし。』

私『えっ、でも下痢じゃないでしょ?』

友『まだ大丈夫。発症したら休まないかん。』

私『ノロってそんなに感染しやすいの? 空気感染しなければ、大丈夫では?』

友『ノロは空気感染する。ノロ発症してのこのこ出歩いてたら問題になる。』

私『吐き気・嘔吐が全く無いから違うと思う。医者も疑わなかったし。ノロは、1~2日で治るらしいしね。』

友『症状は人によって違うからな。まあ判明した時点で教えてくれ。』


ところで、この方は、私の身体の心配は全くしてないなコイツ。

そのような思いを伝えたら、
『ノロの可能性があるのに他人の家に来る方が非常識だろ』
と言ってくる恐れがある。

そしたら、
『当時は、ただの飲み過ぎと信じて疑わなかったからね。ノロの可能性があると分かってたら行かないよ。アナタのような悪意は持ち合わせていませんので』
と、喧嘩を吹っかけてしまい、次回旅行した際のタダ宿が無くなる恐れがある。

だから、上の気持ちは一生心にしまっておかなければならない。


結局は食べても食べなくても飲んでも何しても太らない。羨ましいダロ。
それにしても、このぐらいしか人の優位に立てることが無いのか。優位といっても、曽根ほど食べることは当然出来ないし、大食漢にギャルという真反対のキャラをコラボさせて、お茶の間を楽しませることもできないのだから、食べても食べても、肉もマネージャーも付かない。寒い。