北の欧から2032 時代

昔は、靴下が置いてあるのが普通じゃった。ワスは煙突から家々に入り込み、そっと靴下に品物を入れて去った。
しかし、次第に、煙突がある家が無くなっていった。だから、針金が必需品となった。引き戸と壁の隙間から差し込み、上へちょいと上げれば、屋の内側に取り付けてある金具錠が針金によって押し上げられ、開錠となった。
しかし、高度成長、核家族化、ドウナッツ化現象、バイブルの時代が到来し、新興、分譲住宅達のドアーは、真鍮製の二重ロックスと頑丈になった。
おかげでピッキングウの技術が上達した。去り際に玄関の上方にマジックインキンで印を付け、ここの家での仕事は無事完了したことを同業者に告げた。
靴下は昔と比べて小さくなっていった。主流がゲイムカセットになったからのう。野球盤やぶたみんとんより小さいので、一気に多くの品物を運べるようになった。スパマリオやドラゴクエスト、バンゲリングベイなどを靴下へ入れて去った。ゲイムカセットが磁気デスクになったり、カアドになったり、カアトリッジになったりシーデーになったりしたけど、大きい包装紙で包まれた大きな立方体が豪華と言われた、大きいことはいいことだは過去の話しである。
そして、アイテーバイブルが崩壊し、暫くすると、枕元に靴下が無くなった。代わりに、スマトホンが置かれるようになった。今や幼児からスマトホンを持っている。
なーに、わけない。最近はジジもスマトホン慣れし始めている。ワスはスマトを手に取り、課金制ゲイムをダウンロドーして去った。
かくして、訪問時に荷物が不要となった。ホワイティ袋も不要となり、ラッピングウの手間も省けた。

現在は、枕元には何も置かれていない。全ての人間にはマイクロチップスが埋め込まれ、脳波で操作すれば壁や空中にゲイム映像が映し出されるようになったんじゃ。子供の頭を小突くだけでダウンロドー完了じゃ。
しかし、顔認証型のドアーが多くなり、鍵穴が無くなってもうた。已む得ず事前に主婦と仲良くなり、旦那が帰宅する前にあがらせてもらった。
しかし、子供がなかなか寝ない。一日十時間もスマトするから、ブルウライトゥとやらで覚醒させられての寝付けないのじゃ。
そこで、昼寝を狙うようになった。白昼堂々ソーリを長時間置けば、昼顔が御近所様にバレ易いし、トナッカイを待たせれば、糞をして叱られる。昔は所構わず糞しても何も言われなかったのじゃが。
といって、何も持たずに徘徊しておれば、不審者に間違えられるやもしれぬ。
セコンドバッグでも持つかの……