みっちゃん

小学1、2年生の時、”みっちゃん”というタヌキ面した友人が居た。
彼は私よりも鈍臭くて、足も遅かった。
当時、ナッツ&ミルクというゲームソフトがあり、それをもじって作られた”ミッツアンドミルク”というアダ名をみっちゃんに言うと、彼は決まって鼻の下を伸ばして口を尖らせた。その瞬間に、元からあったアダ名である”口尖んがらせゴリラ”を周囲の人間と共に放ってからかうのが、王道パターンだった。
日々イジられ易かったみっちゃんは、"給食"を食べるのも遅かった。
給食時間、決まって最後に残るのは、みっちゃんと私だった。
この時ばかりは、私にとって唯一の救いは、みっちゃんだけだった。
彼がノロマゾーンに居ることで、私のノロさと居心地の悪さは半減された。
いわば、運命共同体だ。一緒にゆっくり歩んで行こうネ。でも、一番ゲベはみっちゃんで居てね。

そんな感じで私が食いあぐねていると、唐突にみっちゃんが、まだ三分の二も残っていたコッペパンを手に取った。そして、それを縦にしたかと思うと、
「ぐむむむむむむうっーーー!」
っと、断末魔の雄叫びを発しながら口へ突っ込んだ。
パンは、蛇に飲み込まれるように見る見るみっちゃんの口内へ吸い込まれていった。

それを見た私は、喉元へぶっといのが突く感を想像させられ、心証がきたされ、その場でえずいた。
オエオエ嗚咽している私を見たみっちゃんが、直ちに駆け寄り、背中を擦ってくれて介抱してくれた。「メンゴメンゴメンゴ」と謝罪しながら。

普通の低学年は、大食いをしている自分の姿を見た他人が、吐き気をもよおす心境になるとは、気付かないと思う。
根が優しいみっちゃんは、繊細であり、今頃は関根勤のように気が利く人になってるであろう。

そして私は、最後の最期で、敗北するというのは、今でも変わらない。勿論、詰めも甘々なのである。
なにもかも直ぐに投げ出して諦めてしまうので、ストーカーの爪の垢でも煎じて飲み、執着心を付けなければと思う今日この頃である。