そしてそのイカツイ車が我々の車を追い越すと、今度は真ん前でスピードを緩めて徐行するという嫌がらせをしてきた。
友人が路肩に車を停め、ライトを消した。
ヤン車は徐行を辞め、前方へ去って行った。
しばらく停車した後、友人が発進した。
皆が無言だった。ビビッていたのだろう。
しかし、私が無言だったのは、どちらかと言えば腹が痛かったからである。体内で空気圧が上昇して、腸モツが圧迫されたのが原因であると思われた。
だから屁をした。
音が出ないように細心の注意を払いながら、ゆっくりと、ガス漏れするようにスー。
直ちに車内に甘ったるい下水臭が充満した。
誰もが無言だった。
車内が男だけだったら、「クセエ誰だっ!」と直ちに犯人探しが始まったに違いない。
しかし、今回はレディが居る。
罪無き男二人は、犯人が女性だった場合、罪を暴くのは可哀想だと思ったに違いない。
罪無き女性二人は、各々が、(ちょっとちょっとおアタシが放屁したと思われたらかなわないわ)と迷惑こうむってたかもしんない。
誰も窓を開けなかった。
当たり前だ。窓を開けた時点で、車内が腐臭していることを認めることになる。
なんということだ。例え犯罪のニオイがしても、嗅がぬフリして摘発を避けてしまう。
”他者を傷付けるのを怖れて真実を見ようとしないという集団心理を逆手にとり、のうのうと犯行を犯す者が居る”という現実を、我々は知っておかなければならないであろう。
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