麺闘争

つけ麺の完成度においてトップを走り続ける"道"は、卓も小奇麗な板で、膳や器も良く、小料理屋な雰囲気が漂う。割り箸の束がドカンと置いてあるのでは無く、箸と箸置きが丁寧にお待ちしている。静謐な佇まいに飲み込まれ、クチャラーも麺をすする音をいつもより三ボリューム下げている。
思い切って”にぎり”を頼んでみよう。
それが駄目なら”蕎麦”を頼んでみよう。

ラーメンより蕎麦の方が上品な感じがするのは、香りと低カロリが要因であろうか。
うどんに品の無さを感じるのは、麺がデブだからであろうか。

「おそばをお召し上がり下さい」
と、おっしゃるのが、旅館の美人女将であり、
「おうどんをお持ちしました」
と、ほざくのが、上品ぶって”うどん”に”お”を付けてんじゃねえよと言いたくなるほど突っ込み所満載ババアが多いのは何故か。

かつて私が麺差別撤廃運動に取り組んでいた頃、うどん屋で『讃岐ラーメン』と中2が間違えて注文してしまい、
「るらあめんですってええええっっーーー!!!」
と店主が目を鋭角三角にして激昂した事件があった。
どうやら、うどんにかなりのプライドを持っていたようで、ラーメンと一緒にされたことに腹を立てたようだ。
私は即座に名刺を差し出し勃発を鎮火しようとした。しかしオバハンは、なんなのよアンタと怪訝な表情を向け、しかも近い。

「元々は同じ小麦粉じゃないですか。仲良くしましょうよ」
「ええよ兄ちゃん、作ってやるよ讃岐ラーメン」
私は理論でなだめようとしたが、オバハンは聞く耳持たずに厨房へ突入してしまった。

「はいおまちい。讃岐ラーメンと讃岐焼き蕎麦めし。らいすサーヴィスしといたよ。残さず食べてちょうだいね」
どうやら、うどん以外の麺類全般に対して敵意むき出しのようだ。
「私は、麺とライスは異なるモノと区別して、分けるべきだと思いますよ。聖人ではないです」
「元は同じ炭水化物ダロ」
完全に頭に血が昇ってるなあ。話しがマトモに出来る状況では無かった。


後日、問題のうどん屋さんに電話をして、
「近くに美味しいウドン屋ないですか?」
と言い、ガチャ切りした。