小１ある日の水泳の時間、教室で生徒全員が水着に着替え始めた。現在は低学年でも男女別室であろうか？
私の時代は、更衣室で着替えるのは小５からだった。
皆が着替える中、私は着替えもせずに担任の元へ歩いて行った。
小学校は一番前の窓際に、担任専用の机があり、ここの引き出しに教員用の教科書やドリル、資料を置かれている。休憩時間は５分しかないので、担任はいちいち職員室に戻られないことが多い。私は先生が座られる机の前に立ち、
「今日は風邪気味なので見学します」
と言った。
私は泳ぐ行為自体は嫌いではないが、水の冷たさがとにかく天敵で、プールに入ると”目と目で通じ合う”を歌唱してた頃の工藤静香のように、積木くずしの不良娘のように、唇が真紫ルージュになるのだ。
”風邪”と言うと嘘付きは泥棒の始まりなので、”風邪気味”と言い、良心の呵責を誤魔化した。ところで、朝の会にて「風邪気味の人？」と保健委員から聞かれた際に手を挙げる児童のなんたる多かったことか。病ぶることで、他者から心配されると思っている。大事にされたい願望が見え見えである。
「今、急に、風邪をひいたんですか？」
担任が机に座ったまま、目を細めた。
「保健室で、診てもらいますか？」
担任から訝しげな視線を受けた私は、不味いと硬直した。
そして担任は、座ったままで両腕を交差させて下に下ろし、両手で自分の服の下部を掴み、おもむろに捲り上げた。なんと、この時この場で着替え始めたのである。
「ホントウに、グアイがワルいのか、おカアさんに、デンワして、キいてもいい？」
上半身下着姿の女教師が、顔を上向き、雌狐のような鋭く危険な眼差しでじっとり見つめてきた。
「えっ…ぁいや…」
私は狼狽えた。もちろん仮病がバレたからではない。目のやり場に困っていた。
先生の目を見ると、どうしても露になった下着が視界に侵入してくる。紺のブラの中央にはリボンのような結び目が施されていた。
顔が沸騰した。なんとかレッドになっていたと思う。本当に発熱してしまった。
当時に私が好きだった娘は、私より背が高かった同じクラスの女子だが、彼女の裸を見たいとは全く思わなかった。ちょっかい出して、からかうだけで充分満足出来た。小１男子が小１女子の着替えを見てもなんとも思わない。
しかし、大人の女性が着替えるとなれば話しは別。小１から見れば、三十路を越えた女性は相当なオバハンで、女としての市場価値は皆無だが、小学高学年～二十代ぐらいならば、確実に女として見ている。
当時の担任は、半年後に結婚して姓が変わる二十代後半。ギリギリ圏内である。
それにしても、やたら威張って学年を仕切ってた西太后みたいな他組担任(四十代だったかもしれないが、小１から見たら祖母同然に見えた)じゃなくて良かった。いや、そっちの方が寧ろ良かった。
そういうどうして良いか分からない中間煩悩に苛まれた。女性の裸に興味があったことは間違いない。しかし、裸を見たいと思おうとしただけで罪悪感が芽生えた。
とはいえ反面、男性が女性の裸体に触れる行為は、テレビの洋画劇場や火サスでよく目にしたものだが、その時は何の反応も無かった。家族が居ても気まずいという感情すら芽生えなかった。
吉原炎上にて、痩せたコナキジジイみたいな男が名取裕子の裸体を貪っている映像を見て「これ何しとるだ？」と聞くと、「遊んでるの」と母が答えた。
遊ぶ？
変な遊び方だな。全く楽しそうに見えない。名取は嫌がってるし。ファミコンが無い時代は可哀想だと思った。
とはいえ、この不可解な遊戯は、怪しからん戯れと直感した。このような行為の場面は、大体にして悪い男と悪い女が絡み合いながら不気味な笑みを浮かべていることが多かった。その様はおぞましく、悪い人間だからこそ楽しめる悪趣味だと思った。また、悪人同士の結束を強固にするために営む確認行為みたいに感じた。
とはいえ、私が５歳児の時に「明日はゴーグルピンクがやられる日」と言っては、４歳男児と二人でニタついた記憶もある。
”大戦隊ゴーグルファイブ”の予告で流れた、紅一点のピンクだけが捕らえられて敵のアジトで鎖ではりつけにされてる映像を思い浮かべてニタニタしていたのだ。この時エロいという自覚は無い。しかし、”毎度おさわがせします”でノゾキをする中坊の表情と同種であったことに違いない。
大人から見れば幼児のニタつきは無垢な笑顔に見えるだろうか……同年代の幼女が見たらスケベと察知するから、女はやはりマセている。
結局、小１辺りは性興味に対して境界が曖昧で、統一性が全く無いのだ。
まとめると、幼い児童は同級生の裸には興味が無い。
大人にも特に興味が無いが、間近で見るとドキッとするが、この感情がどういう種のものか分からない。
女性に触れたり裸で抱き合うことに興味無く、一部の悪い大人達やヤクザだけがする行為と思っている。
でも、クラスで好きな娘の頬にチューしたいと思うが、口にしたいとは思わない。
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